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あるいは僕におけるもっとも大きな失敗は、その出会い方にあった。彼女の言うところによれば僕は「卑屈で独善的」らしく、そう印象付けたのはやはりというべきかその出会い方にあった気がする。
「僕は君と違って器用じゃない」
と、確か僕はそんな風に言ったのだと、目の前でもはや化け物と呼べるまでに変化した彼女を見て思い出していた。
かつて僕の胸を濡らしたその目は、一滴の涙も存在しない虫のそれへと変貌を遂げ、その網のように細かいいくつものレンズに僕を映していた。腹部は黒い鉄の塊だ。あの晴れやかでなだらかな丘のような白い肌はどこにだって見当たらない。黒い、黒い、ただ見たものを拒絶するかのようなその彼女の腹部が示す意味なんてものは、僕には到底理解できなかった。
「僕のせい?」
そう聞いて僕は後悔する。その質問は根底にある僕の卑屈さと独善的な性格からくるものじゃないか、と。彼女は頷きもせず、首を横に振ることもしなかった。当然のことだ。僕がそうさせたんだ。
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