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「咲夜、GTOの永礼透真って知り合い?」
「え、夢月くんどうしたの? もしかして会ったとか?」
「いいから答えろ」
質問しただけで焦りすぎだろ。答えたようなものじゃないか。あと質問返しするな。
「大学の先輩だよ。サークルが同じで知り合ったの」
「サークル?」
「理学サークルっていう、理系のことならなんでもやってみようみたいな、ちょっと説明難しいけどぐだぐだしたサークル。俺が入ったときにはファンクラブ化してた。ほら、数学者の綾瀬流生がいたから」
「ああ」
綾瀬流生。名前と、顔写真くらいなら見たことがある。クールビューティーとか騒がれてたイケメンの。
そういえば永礼社長のパートナーだったな。大学からの付き合いだったのか。へえ。興味がない。
え、ちょっと待てよ。
昼間は頭が回らなかったけど、『俺が流生をかわいがってる』ってそういうことだよな。綾瀬流生、あの顔でそっちなのか。うわーたしかに意外だわ。そりゃ『女顔だからかわいがられてる』って思うわ。うん、わかるわかる。
……じゃなかった。
っていうことはあの人の話は本当だということだ。咲夜が夢月との関係を話したと。
「あんた、まじで広めすぎだからな? 職場でも先輩にも俺のこと言いやがって」
「待って、それはまったくの誤解だって! 俺もそれなんで先輩が知ってたのか知らないんだ」
「はあ? でもあの人、驚きの白さがどうとか言ってたぞ。けっこう最近だろ」
「ね。ほんとになんで知ってるんだろう」
焦る咲夜は、本当に心当たりがないようだ。
だがあの人は「口を割らせちゃう」と話していた。あの忙しさだ、わざわざ後輩の身辺調査を頼んだわけでもあるまい。咲夜からしか情報ルートはない。
なのに咲夜は否定する。平行線だ。
いつもなら咲夜の嘘を疑うだろうが、今回に限っては違うようだし。
「っていうことは、永礼先輩に会ったんだよね。いつの間に」
「今の取引先があの人の会社で、会社まで呼ばれた。当分そっちで仕事」
「そういうつながりか! わーやられた!」
今回ばかりは咲夜の反応を大げさだと笑えない。搦め手で巻き取られているような、そんな気がする。
「咲夜、よっぽど気に入られてるんだな」
「逆だよ逆! 初対面で名前呼んだこと根に持ってるんだ! 何年かぶりに会ったら、最近特に絡まれてる」
ひどい物言いだが、毎回あれで口を割られるのなら少し同情する。初対面で名前呼びした咲夜が悪いといえば悪いが。
「ん? 名前?」
名前で呼んでもいい、と今日言われなかったか? あれはまさか、本当に呼ぶか試していた? 呼んでいたら咲夜と同じ目に?
「うーわ、怖……」
偶然回避していた永礼のトラップ。いやトラップかどうかは知らないが、咲夜の怯えようからして、良い結果にならなかったことは間違いない。
「今頃鳥肌立ってきた……」
「だよね。じゃあ夢月くん、ちょっと温め合おうか」
「それとこれとは別」
くっついてくる咲夜を引き剥がす。まったく、どいつもこいつも気が抜けない。
夢月は溜め息をつきそうになって、溜め息が癖になっている咲夜の職場の苦労人を思い出した。
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