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「ねえ、起きて? 起きてちょうだい!」
どこかで聞いたこのとある声の主が、必死に私を揺さぶり起こす。
微睡の沼の底から一気に引き上げられたような驚きに、心臓がぎゅうっと縮み上がり、ドッドッドという激しい動悸の中で目覚める。
どこだ? ここは?
見覚えのあるようで、ないような木目の天井、和風の照明器具。
なんで私はここで寝てるんだっけ?
「ねえ、これって一体どういうこと~? あなた、何をしたの?」
私の顔を覗き込む若い女の顔、それには嫌というほど見覚えがあった。
「……、どういうこと?」
震える声を振り絞ってわかる。
いつもの自分の声とは違う、カサつき、しわがれたような。
「私だって聞きたいわよ~。あなた、足立さん? 足立 奈々さんよね? ねえ~?」
「待って、その話し方! まさか、菊池さん!?」
慌てて起き上がろうとしたのに、なぜかうまくいかない。
ベッドの上でジタバタしている私に「ちょっと待って。無理しないでくれる~? 腰が痛くなっちゃう!」と菊池さんがリモコンを手にする。
いつも私が菊池さんに、そうしてあげていたように、ベッドをゆっくりとリクライニングさせ起き上がらせてくれた。
「どうお~? 身体の調子は?」
泣き出しそうな笑顔の菊池さんに、一言だけ呟いた。
「最悪です」
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