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「水道、光熱費なし、食費なし、寮代も不要よ~。お給料は、十五万くらいでどうかしら? あ、勿論お互いの身体が元に戻ってからの契約ですからね~? それまでは、私があなたの面倒を見るわ」
「なんで……」
「あ、お部屋は隣の空いてる部屋、使ってね。荷物、そうだわ、荷物! 明日、あなたの荷物取りに行かなくちゃ。まだ寮にあるのかしら? 住所を教えていただける~?」
「なんで、そんなに? 私、赤の他人ですよ? あなたの孫でもなんでもない、ただの」
「そうねえ、他人だけど。でもあなたは優しいじゃない? 私が眠るとそっと布団をかけてくれたり、寒くないか暑くないかって気にしてくれたり。今日はいい天気ですよって教えてくれたりしたのは、あなただけだったからね。私、そういう何気ないお話が嬉しくて楽しかったの。時々聞こえるあなたの鼻歌もまた聞きたいし」
プリンと共に流れ込む涙を止めてくれるように、指先で拭いてくれた菊池さんが笑う。
「それに、ほら! 一緒にいてもらえないと私が困っちゃうでしょう? 色んな意味で、ね?」
私の手を菊池さんが握りしめる。
その指先のあたたかさに、頭が下がる。
震える手で、ギュッとしがみつくように握り返した。
「身体が元に戻ったら、是非個人契約をよろしくお願いします」
「もちろん! さて、夕飯どうしましょう? 久々に腕が鳴るわ~」
「菊池さん、冷凍庫にふぐのお刺身ありましたよ」
「まあ、ちゃっかりしてるわね、もう見つけてたの? いいわよ、少し湯通ししたら、私でも食べられるしね」
「刺身のままがいいです」
「ダメよう、結構コリコリしてるから、喉に詰まっちゃうわ~! 気を付けてくれない?」
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