青天の霹靂

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「私、足立さんがいいのに」 「私も菊池さんはワガママ言わないし、しっかりしてるから楽でした」 「やだ、褒められちゃった、嬉しいわあ。じゃあ、ずっと続けて~?」 「無理ですよ、クビになったんですから」 「ねえ、どうしてクビになっちゃったの?」  普通、その聞きづらい部分に踏み入って来る?  菊池さんって時々、空気読めてないとこあるんだよなあ。  育ちのせいかもしれないけれど、天然っぽいおっとりとした性格。  私とは真逆の幸せな世界に生きてきた人だからだと思う。  さして広くはないマンションの一室、間取りは十五畳ほどのリビングダイニング、八畳の部屋が二つ。  でも置いてある家具や、飾ってあるティーカップ、それに着ているパジャマはいつも素材のいいもの。  亡くなったご主人が大手商社の重役だったらしいと聞いたことがある。  お子さんには恵まれなかったけれど、夫婦で世界を旅してたこともあるとか。  火曜日と金曜日に担当してたのが、菊池さんの訪問介護だった。  介護と言っても菊池さんは、少し足が不自由なくらいだから起き上がるのを手伝ってあげるだけで良い。  おしゃべり好きだから、話し相手になるくらいで、あまり手がかからないのだ。  つまり私はこの家で、菊池さんが寝ている間はテレビを見たり昼寝したりとやりたい放題をしていた。  さっきみたいに仏壇のお菓子を勝手に食べたこともある。  ああ、そうか、だから罰が当たってこうなっちゃったのかもしれない。 「足立さん?」  一瞬ボーッと遠くを見ていた私を菊池さんが覗き込む。
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