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「本日より、契約更新はいたしませんので。え? 今月いっぱいのお金はいただいているからと? ああ、それは返してもらわなくて結構よ~、こちらの都合ですし。大丈夫です、自分の面倒くらい自分で見ますわ。ご心配ありがとうございます」
相手がまだ何か言っている模様だったのに、私の目をチラリと見て、茶目っ気たっぷりに舌を出して見せた。
「それでは、ごきげんよう」
カチャンと受話器を戻した菊池さんは笑顔で。
「あなたの会社と契約切っちゃった。これで鬼も来ないわね~」
次の担当者の話だろうけれど、これから先どうする気なのよ、菊池さんってば!
今は私の身体だから動いていられるだろうけど、元に戻ったらこうして起き上がるのも辛いというのに。
「ねえ、今夜は久しぶりに私が食事の腕を奮うわ。何が食べたい? と聞いても、そうねえ、あまり固いものはダメだから~」
ブツブツ言いながら冷蔵庫の中を確認している。
そしてプリンを二つ持って、私の側に戻って来ると。
「足立さん、食べながらでいいから私の提案聞いてくれない?」
プリンの蓋を取って私の首元にタオルを巻いてくれるのは、零さないようにと私がしてきたことだ。
いつものように、めちゃくちゃ甘いはずのプリンは、菊池さんの身体の味覚のせいか、そこまでの甘さは感じられない。
それよりも、しょっぱいのだ。
菊池さんの話を聞くほどに、しょっぱさが増していく。
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