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中は、普通だった。といっても、薄紫色のシートは初めて見たけれど……。それ以外は、いつも乗っている電車と変わらない、何の変哲もない、列車に見えた。
座席に腰掛けたところで、扉が閉まった。ゆるやかに、また道なき道を走り始めていく。
どうやって、走っているんだ? これ……。
揺られつつもようやく疑問を持って辺りを見回したとき――車内に、機械音声のアナウンスが響いた。
『ご乗車、ありがとうございます。この回想列車は、つかさ号・過去行きです。まもなく、十四歳、十四歳に到着します。未来方面と現在線・普通列車はお乗り換えです。車内にお忘れ物のないようご注意ください。お出口は右側です。扉にご注意ください』
男性とも女性とも言えない声色だった。
そのアナウンスが三回連続で流れたとき、ようやく僕の頭はクリアになる。
……なんだって?
つかさ号? 過去行き? ……十四歳?
その他にも入ってこない単語が幾つかあったけど、もう忘れてしまった。僕の頭の中は、一瞬にしてこんがらがってしまう。
「何を、言って……」
扉が開いた。けれど、そこにはただ、木々と草木が生い茂った砂利道があるだけだった。駅もないところに放り出されても……と戸惑っていると、またアナウンスが響く。
『扉が閉まります』
「あっ……」
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