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「くそ……っ、青太のせいだ」
飲みの席には、僕の旧友である青太もいた。僕ら新人のなかでも、頭一つ抜けて営業成績の良い、丸眼鏡の青太。小・中と冴えなくてからかわれ、けれど、ダイヤモンドのように硬い芯が一本通った、我が道を行く青太。
あの頃と変わらない、眼鏡の奥にある澄んだ深い黒の瞳を向けられ、こう言われた。
『司。お前も、つまらない奴になったな』
その後の記憶は、定かではない。
何か、恥ずかしいことを口にして、よろよろと店を出た気がする。
気付いたら、いつもの反対車線にいて、実家の方へと向かっていた。
――勿忘駅は、僕と青太の、秘密基地だった。わざわざ暑い中ここで……あぁ、二人で自由に物語を創っていた。僕は漫画を、青太は小説を書いていた。……思い出したくもない、黒歴史だ。
思い出したくも、なかった……。
すっかり日の沈んだ空に向かい、手を伸ばす。
……僕は、今の僕は――一体、この手で何を成し遂げているというのだろう?
青太を馬鹿にしていた人間に、自分がなってしまっている。
今の僕を見る青太の瞳が、頭に焼き付いて離れない。
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