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都市伝説が出来たのは、いつからだったのか。誰から聞いたのか……覚えていないけれど、やっぱり、ただの噂であって伝説ではないらしい。
「……さて、帰るか」
夜風にさらされて酔いが覚めたのか、急に頭が冷静になってきた。
こんなところに来て、僕は何をしようとしていたんだ?
電車が来たところで……どうするつもりだ?
乾いた笑いが漏れた。
「こんな廃駅に、電車なんて来るわけ――」
身体を起こし、線路の向こうに目をやると、何やら真っ白な箱があった。
カタンコトン……と音を立ててこちらに走ってくる。
「……電車?」
暗やみの中でそれは、光よりも眩しく見えた。灯りもついていないのに、凸凹の線路の上を、しっかりと進んでいる。
明らかに、この世のものではなかった。
徐々にスピードを緩め、僕の前で止まると、列車はプシューと扉を開けた。
誰も乗っていない、一両編成の列車だった。
「……嘘、だろ?」
僕は、まだ酔っているのか?
ここは、夢の中なのだろうか……。
見えない糸に引っ張られるようにして、僕は立ち上がり――車内に足を踏み入れていた。
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