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反射的に立ち上がるも、もう遅かった。
列車は、また独りでに動いていく。……独りでに……ん?
ふと、運転席の方に目をやった。そこには、確かに車掌がいた。
よかった、と深く安堵の息を吐く。車掌に近づいていくと、窓から運転席を覗き込んだ。
次の瞬間。僕は腰を抜かし、床に尻もちをついていた。
「なっ――……あっ、」
車掌の、顔が無かったのだ。
帽子の下には、のっぺらぼうの黒いマネキンのような顔があるだけだった。
そんな僕に容赦なく、アナウンスは続く。
『ご乗車のつかさ様、今までお疲れ様でした。この列車は、現在線各駅への連絡はございませんので、ご安心ください』
「はっ……!? 何言って……」
『この先、揺れますのでご注意ください』
声を出す間もなく、列車はぐるぐると回転し始めた。窓があるのに、ジェットコースターにでも乗っているようだった。とんでもないGと吐き気が襲ってくるなか、かすかに機械的な音声が聞こえてくる。
『次は十四歳、十四歳です』
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