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「ねぇ、なんか怖い話してよ!」
助手席に乗っている彼女がはしゃいでいる。現在、彼女を連れて夜のドライブデート中。俺たちは長いトンネルの中を走っていた。トンネルに入ったのはだいぶ前になるが、まだ出口は見えない。
「いきなり怖い話って言われても……」
「じゃあ、お題は呪いの村ね!」
唐突なお題設定。
一瞬だけ彼女に視線を送ると、彼女の無邪気な笑顔が見えた。
俺はハンドルを握りながら話し始めた。
「その村は大きな山の麓にあって、災害も絶えない地域ではあったけど、山の神を崇めることで、村人たちは自然とうまく調和しながら平和に暮らしていた。ところが、日本が急激な高度経済成長期に突入して、村のシンボルである大きな山にトンネルを開通させる話が持ち上がった。もちろん村人たちは反対したが、強制的に土地を取り上げられ、数年後にトンネルが開通された。山の神の怒りに触れたのか、そのトンネルに入った者は二度と外へ出ることはできないと言われている」
俺は思わず苦笑いした。
「どう? 怖かった?」
突然話せと言われたにしては出来がいいのではないだろうか。
「うーん、そうねぇ……」
しばらくして、彼女はまた無邪気に笑う。
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