七章 手繰り寄せられた運命

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 ベビーカーの前に回り、灯希を覗き込んでみると、大きな目をパチパチしながらキョトンと彼を見上げていた。 「灯希。パパだよ? パパ」  自分も笑顔になり呼びかけてみると、不思議そうな顔で灯希は口を動かした。 「たった!」 「たっちゃんじゃないよ、パパ」  そうは言ったものの、いきなり理解できるわけはない。観察するようにじっと彼を見つめたあと、ぷいと横を向き自分に手を差し出した。 「だっだ! だっだ!」 「はいはい。抱っこね」  ベビーカーのストラップを外し灯希を抱き上げると、自分たちの様子を眺めていた大智も立ち上がった。 「やっぱり、すぐには慣れてくれないよね」  彼を見ようとしない灯希を見て、大智は苦笑いを浮かべている。 「すみません。そんなに人見知りするほうではないんですけど……」 「大丈夫。泣かれる覚悟もしてたから、これくらい想定内だよ。美礼からも、焦らず遊びに付き合ってこいって言われているしね」  そういえば、今日の大智の格好は昨日よりずいぶんカジュアルだ。ライトグレーのスエットシャツにブラックのコットンパンツで足元はスニーカー。場所が公園だし、自分たちに合わせてくれたようだ。 「ありがとうございます。灯希? 遊ぼうか。何しよう?」  ようやく顔を上げると、灯希は降ろせとばかりに足をバタバタさせている。自分で歩くのが好きな灯希はいつもこうやってアピールする。  降ろした途端、走り出しそうな勢いの灯希の手をまず掴む。 「手を繋いでね」  飛び出しを防止する意味でも、こうやって声かけをして手を繋ぐようにしている。それは勤務先の保育園でも同じだ。  手を繋いだままベビーカーの持ち手に手をかけると、大智が切り出した。 「僕が……手を繋いじゃ駄目かな?」 「ぜひ! 結構凄い力で引っ張ることがあるので、気をつけてください」  彼は灯希におずおずと手を差し出す。その大きな手のひらに、灯希は迷うことなく自分の小さな手を乗せた。
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