七章 手繰り寄せられた運命

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 樹と眞央がショーに参加する週末。二人とも、都内ではあるが二日に渡って行われるショーの会場近くに宿泊することになっていた。  そしてそれを大智に話すと、美礼から連絡があった。 『由依ちゃん、お家の人いないんだって? 灯希くん連れて家に泊まりにおいでよ!』  最初は子ども連れで泊まりなんて迷惑じゃ……と断ったが、『むしろ二人に会いたいし、由依ちゃんともゆっくり女子トークがしたい』とはしゃぐ美礼に、断りきることができなかった。  土曜日はまず、新居となる部屋をいくつか内見してから、夕方に仕事が終わる美礼を拾い、一緒に家に向かうことになった。  これまで週末は、少しずつ時間を延ばして車に乗る練習をしてきた。彼の運転は人柄を表すように穏やかで心地良い。灯希はすっかりチャイルドシートにも慣れ、車に乗る楽しさを覚えたようだった。そして自分も、車に乗っても恐怖で震えることはなくなっていた。 「――どうでしょう。こちらの物件、かなりの人気で。やっと空きが出たばかりなんです」  スーツ姿の不動産会社の社員が、ニコニコしながら部屋の奥に進んでいる。四十代前半だろうその人は、進みながら部屋のアピールポイントを話していた。  今日物件を見るのはこれで三部屋目。こだわりなどないと思っていても、実際に見ると良いところも悪いところも気になってくる。  日当たりや水回りの動線、周りの環境。キリがないと思いながらも、これから長く住むことになるのだと思うとやはりあれこれ気になってしまう。 「どう? ここは」  悩んでいると、大智に話しかけられる。その腕では、灯希が下ろしてと身を捩りアピールしていた。彼がそれに従って灯希を下ろすと、灯希はさっそく部屋の探検を始めたようだ。 「今日見た中では、一番いい……ですよね」  南向きのリビングは明るくて、燦々と陽が差し込んでいる。分譲貸しのマンションだけあって設備は申し分ないし、大智が『できれば』と言っていた駐車場もある。 「今日無理して決めなくてもいいけど、何か気になる?」 「その……。たぶん、ここが一番、家賃が……」  口籠るように切り出すと、彼は少し驚いた表情をしたあと、息を漏らして笑っていた。
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