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両校の準備が整い、審判のかけ声と共に練習試合が始まった。健介達は先攻らしい。
一人目と二人目のバッターはあっけなく三振。健介が言っていた通り、相手投手は手強いらしい。三人目は三球目にバットに当ててファールを出したけど、次の変化球に戸惑って結局三振。一回の表は三者三振ですぐに終わってしまった。
僕は健介達が守備位置に着くのをただ眺めていた。健介はキャッチャー。捕手は頭が良くないと駄目らしいけど、勉強はともかく小さい頃から野球馬鹿だから、きっと大丈夫だろう。
なんとなく他の観客を眺めてみると、保護者の集まりらしき場所から少し離れた所に、見知った顔が見えた。どうやら一人らしい。
僕はその人物に視線を向けたまま、茜に話しかけた。
「茜、あれ、絵里ちゃんじゃない?」
今までじっと健介を見つめていた茜も、僕に言われてその方向に目を向ける。
今日は私服で髪も下ろしていつもとは違う雰囲気だけれど、あれは確かに絵里ちゃんだ。
「本当だ、私ちょっと行ってくるね」
それだけ言うと茜はすぐに立ち上がり、絵里ちゃんの方へと走って行った。別にわざわざ行かなくてもいいと思うんだけど。
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