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Chapter 1 緋眼の末裔
:
2050年6/24
中米の小国ラオリマ共和国。
空港に降りっ立ったのは駐ラオリマ大使の伊藤豊。
新たに国交が開かれたこの国の初代駐在大使に抜擢されたのが伊藤であった。
外務省のキャリアとして伊藤にしても初めての駐在大使となり、その目は野心に満ち溢れていた。
日本人の大使館職員は数日前に現地へと入り、開館の準備をすすめていた。
現地SPに警護されながらまるで大きな舞台へと向かう主演のような足取りで堂々と空港施設へと歩く伊藤。
その悠然とした姿を遥か遠くで見つめる一人の女。
赤い目が特徴的な小柄で若い日本人。「G」のコードネームで呼ばれる暗殺者。
裏の世界でその名を知らない者はいない。
彼女の目的は伊藤豊の暗殺。
クライアントは内閣総理大臣。
日本政府直轄の公安諜報員でもある。
Gは素早く空港施設内へと侵入する。
殺り方は単純。
伊藤は指示りにトイレに向かう。そこにラオリマの要人が待っていて情報を得る。というシナリオ。
Gは伊藤がトイレに入ったのを確認して、10人いた警護を一瞬にして斬り殺す。
そしてパイロットの上着を羽織り、トイレ内でたたずむ伊藤の背後に回り口を塞ぐ。
「伊藤豊。総理の命にてお命頂戴いたします。
私刑ゆえ罪状はございません。あえて理由をつけるのであれば日本国元首に対する恐喝及び国家への反逆ということでしょうか。」
あまりにも甘美で幼さの残る優しい女の声。
口をふさがれて声の出せない伊藤。抵抗を試みるが女の力とは思えない強い拘束力で身動きが取れない。恐怖で体がガクガクと震えだす。
Gは細い剣を静かに確実に心臓を貫いていく。
一瞬の硬直を見せた伊藤は即絶命。
その場に倒れた。
Gは迅速に血まみれの退路を闊歩し姿を消した。
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