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地平の彼方より現れた朝陽が、露に濡れた草原に聳える城壁を橙色に染め上げている。その城壁の内側、飛び交う無数の矢の下で、甲冑に身を包んだ兵士たちが槍や剣を振るって火花を散らしていた。男もその一人だった。
「この城を落とせば、金銀財宝を分捕れる。死んでたまるか!」
男は横から突っ込んできた守備兵の槍を盾で受け止め、懐に潜り込むと守備兵の首根っこを叩き斬った。
倒れてきた守備兵の身体をかわすと、傍らに戦友の男が駆け寄ってきた。
「おい、血まみれじゃねーか」
この戦場にあって悪態をつけるとは大したやつだと感心しつつ、男は「お前もまだ生き残ってたか」と精一杯の冗談で返した。
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