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到着した駅は普段使っている駅より天井が高く、見慣れない駅構内に視線を彷徨わせてしまう。
でも、改札ホームを出ると正面の切符売り場のところに長身の男性が居て、直ぐにそれが千晶さんだと分かった。
千晶さんも私ことが分かったみたいでさっと手を上げてくれる。
黒のテーラージャケットに揃いのパンツスタイル。インナーは白いシャツで千晶さんのスタイルの良さ引き立つファッションだった。
「千晶さん。お待たせしました」
「いいや。大丈夫。それよりも足を運んでくれてありがとう。お陰で準備は出来た」
そう言って私の手を繋ぎ、改札口の外へと歩き出す。
手をさっと繋ぐ。その自然さが嬉しい。
「結佳、ネックレス付けてくれてありがとう。服装も可愛いよ」
千晶さんの言葉ににっこりと笑っていつも通りの言葉を返す。
「千晶さんもいつもカッコいいですっ、て。私達こればっかりですね」
「結佳が可愛いからね。これからもずっと言うから、結佳に飽きられないように工夫しないといけないな」
優しく微笑まれ『ずっと』と言う言葉に早くも赤面してしまい、違う話題を振る。
「そ、そんな工夫なんかしなくても大丈夫ですから。充分ですっ。えっと。今からどこに行くんですか? 公園とか?」
既に駅を出て外の緑地公園の横の歩道を歩いている。昼下がり、お散歩にはうってつけの場所。こうして千晶さんと歩くだけでも楽しい。
「それはまだ秘密。ここから五分ぐらい歩いたところが目的地。それまでは……そうだ。父さんから戸籍の事とか聞いた?」
「えっと。昨日、軽くは聞いてます。千晶さんは塚本の戸籍から既に独立していて、伊織性の戸籍になっているんですよね」
「そう。別にそれで父さんと親子関係が無くなった訳じゃない。まだ父さんと里佳さんは入籍していないが、連れ子同士の結婚は──」
「法律的には問題ないってやつですよね」
千晶さんの言葉を引き継ぐと、そうだと千晶さんが頷く。
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