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「それと、父さんの遺産相続のことで結佳に養子縁組を持ち掛けて来るかもしれない。この辺りは父さんの顧問弁護士に相談してからになるとは思うが。一先ずは、結佳が俺と結婚してくれるなら伊織性を名乗って貰う事になる」
遺産なんか相続したいとは思ってない。しかし、千晶さんとの未来を望むと、TSUKAMOTOと言うバックボーンは切り離せない。
TSUKAMOTOと言う会社が大き過ぎて、私も多少は無関係じゃなくなると言うのは承知はしている。
ただ、今はそれよりも。
『はい! 勿論、伊織結佳になりますっ!』と、言いたくなるところをグッと堪えて。
「早く返事がしたいです。私、千晶さんに言いたいこと沢山あるんです。二十四時間じゃ足りないぐらい。だからずっと、ずっとこれからも聞いてくださいね」
繋いだ手に力をそっと込めて、繋いでる千晶さんの腕にそっと体を寄せた。
「何を聞かされるか楽しみだな。残りの俺の人生で足りるといいんだが」
千晶さんがくすりと笑い。私も笑う。
もうプロポーズの答えなんかとっくに出ている。それでも二人で気持ちを確認する喜びに胸が高鳴り暖かくなるばかり。
お互い笑顔のまま、他愛の会話を楽しんで少し歩いたところ。千晶さんがここだと、目的の場所に辿り着いたようで足をとめた。
目の前には黒く綺麗な背の高いビル。
ビルの足元は商業施設かと思う程に緑が整えられ、広々とした空間に目を見張っていると「さ、中に入ろうか」と私の手を引き、ビルの敷地に足を踏み入れた。
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