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そっと空いた手で私の頬に触れるからドキッとしてまい『ここでは流石に恥ずかしいっ。黙っておきますっ!』と言う意味を込めて首を勢いよく縦に振る。
「まぁ、後でキスは沢山しようと思っているんだけども」
「っ」
「それに俺は最近、行って来ますのキスだけじゃ物足りなくなってしまっていて。多分、結佳が背伸びして顔を赤くして。照れながらも目をギュッと瞑ってキスしてくるせいかな。そんな結佳が愛くるしいからなんだけども──それはさておき行こう」
笑いながら私の手を引いて歩き出す千晶さん。
私は何も言えない。
「〜〜っ!」
(千晶さん、私が喋れないからってイジワルしてるっ!)
それでも繋いだ手は離さず。
頬を膨らませてそっぽを向く。形だけの抵抗。
その証拠に歩調は揃っていて、ゆっくりと建物に向かう。
隣で千晶さんはまたクスクスと楽しげに声を漏らしていた。
その笑い声に振り向いてしまいそうになる。
でも、せめて建物の入り口に着くまでは顔を見てあげないんだからと思っていたのに。
「結佳は拗ねても可愛いな」
耳元で囁かれて思わず千晶さんの顔を見てしまい、何だか悔しくなる。
でも──この感覚がたまらなくて。
好きな人と共有出来る時間に、私も最後は笑ってしまうのだった。
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