〜エピローグ〜

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建物内は本当にホテルのラウンジのような贅沢な空間が広がっていた。 そこにシックなソファとテーブルで談笑している人達がちらほら。営業マンスタイルの人とご年配の夫婦と思しき組み合わせが居たと思ったら、恰幅の良い男性や着物姿の女性なども居る。 年齢層は少し高めな気がしたが、どの組も和やかに談笑を楽しんでいた。 そんな人達に視線を注いでいると、千晶さんの前にパッとスーツ姿の男性が現れた。 「伊織様。本日はお越し頂き、誠にありがとうございます。鍵はこちらに」 男性が恭しく私達に挨拶をして千晶さんに鍵を差し出すと、千晶さんが「ありがとう」と軽く返事をして鍵を受け取った。 男性は千晶さんが鍵を受け取るのを見てから機敏に、私達を入り口横のエレベーターホールに案内する。端的なやり取りだけだったが実にスムーズだと思った。 (多分。千晶さんはこの人と事前に打ち合わせをしていたんだろうな。だから駅で待ち合わせだったのかな) その打ち合わせが私のためなのかな? と勝手に考えてしまうと、また嬉しくなり。 軽やかな気分で千晶さんと一緒に男性に着いていくと、案内されたホールも当たり前のように広かった。 ガラスの壁面から自然光がたっぷりと中に差し込んでいたが外からは丸見えにならないように、ガラスの向こう側には剪定された木々が並んでいた。 その足元には可憐な花が咲いた花壇があって、ラグジュアリーな空間と言う言葉がしっくりと馴染む。
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