火曜日

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火曜日

 火曜日。おはよう、静希。僕は仕事をする。君は何をする?  僕は時々牛丼じゃなくて、親子丼を頼むけど、君は紅生姜に恋しているから、牛丼のままかな。  先日渋谷で起きた殺人事件、犯人が捕まったんだって。だけどしばらくは路上でのパフォーマンス禁止。正義ってなんだろうね。  そういえば、川崎大師に行ったとき、葛餅を買うのを忘れちゃった。君はあれが大好きだったね。近々また行って買ってくるね。  今度、スカイツリーに登ってみようと思うんだ。東京タワーよりも高いところに行けるけど、鳥はいないかもね。  それから、定期的に浅草の風俗へ通うことにしたんだ。だけど勘違いしないでほしい。性欲を満たすためじゃなくて、話をするためなんだ。そこにいるイオリさんは、僕にとっての理解者だから。  ああ、君は密葬されるんだって。君の肉体とはお別れだ。だけど、僕の中に君は宿っている。  不思議だよね。人は死んだら終わりだって思っていたけど、そんなことはなかった。君は救いようがない世界で生きると僕に言ったけど、残った僕はそれを望まないよ。もちろん、この世は報われないことばかりで、性善説なんてへし折られるような世界だけど、綺麗事なんて真っ黒に染められる世界だけど、嘘偽りが運びっている世界だけど、僕はもう少しだけ信じていたい。君と一緒にいられる可能性を。君が放ってくれた矢が僕の心を光に満たしても、孤独にはならないって希望を持ちたい。 「これからもよろしくね」  日曜日、静希が言ってくれた言葉に、僕は返事をした。  そろそろ、春が訪れようとしている。
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