27人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「もうすぐ着くよ」
そう言いながら、暁斗は歩きづらい階段をゆっくりと進む。まるで私を気遣うような歩調で。
いつもそう。暁斗はいつだって優しい。
泣かないように、私は唇を噛み締める。これまで泣き顔ばかり見せてきた暁斗に、最後くらい笑っていたい。
私は悲しみを胸に押し込んで、笑顔を見せられるように自分に言い聞かせていた。
丘の上に登ると、暗がりに佇む神社が見えた。
ここで私たちは完全に終わる。そう思うと、足がすくんでしまった。
だけどなぜか暁斗は神社には入らず、側面を回り込むように進んでいく。
「暁斗、どこに行くの」
「遠いけど、たぶん見えるから」
見えるって何が? そう尋ねようとしたとき、遠く離れた場所からドンッと音が響いた。
暁斗が神社に背を向けて立ち止まる。
追いかけて丘の端にたどり着くと、ひらけた景色が目の前に広がった。
眼下に煌めく街明かり。その真上を覆い尽くす夜空に、遠く、花火が咲いていた。
ドン、ドン、パラパラパラ……
ドン、ドン、パラパラパラ……
咲いては消えて、咲いては消えて。
泣かないつもりだったのに、色とりどりの光の筋はどんどん滲んでしまう。
最初のコメントを投稿しよう!