運命は夜に散る

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「もうすぐ着くよ」  そう言いながら、暁斗は歩きづらい階段をゆっくりと進む。まるで私を気遣うような歩調で。  いつもそう。暁斗はいつだって優しい。  泣かないように、私は唇を噛み締める。これまで泣き顔ばかり見せてきた暁斗に、最後くらい笑っていたい。  私は悲しみを胸に押し込んで、笑顔を見せられるように自分に言い聞かせていた。  丘の上に登ると、暗がりに佇む神社が見えた。  ここで私たちは完全に終わる。そう思うと、足がすくんでしまった。  だけどなぜか暁斗は神社には入らず、側面を回り込むように進んでいく。 「暁斗、どこに行くの」 「遠いけど、たぶん見えるから」  見えるって何が? そう尋ねようとしたとき、遠く離れた場所からドンッと音が響いた。  暁斗が神社に背を向けて立ち止まる。  追いかけて丘の端にたどり着くと、ひらけた景色が目の前に広がった。  眼下に煌めく街明かり。その真上を覆い尽くす夜空に、遠く、花火が咲いていた。  ドン、ドン、パラパラパラ……  ドン、ドン、パラパラパラ……  咲いては消えて、咲いては消えて。  泣かないつもりだったのに、色とりどりの光の筋はどんどん滲んでしまう。
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