運命は夜に散る

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 浮かれに浮かれた翌日は、引き続き灰色の分厚い雲が空を覆っていた。  しかも夜は雨予報。  なんとか保ってほしいと空に祈りながら、彼と初めての待ち合わせをした。浴衣はすぐには用意ができず、ロンTにショートパンツといういでたちだ。  電車に乗って、少し歩いて、花火会場の川縁にたどり着いた。  道中ずっと私ばかり話していて、彼は興味があるのかないのかわからない顔で相槌をうっていた。  人混みの中、小さなレジャーシートを広げて座る。隣に座る彼が近くて肩が熱い。泣きそうなほど幸せだった。  そのとき、空からポツポツと雫が落ちてきた。  それはみるみる大粒の雨になり、混み合っていた会場からは人々が迷いながらも少しずつ帰り始めた。  彼もカバンから折りたたみ傘を取り出して立ち上がった。 「電車混む前に俺たちも帰ろうか」  私はたぶんすごく悲しい顔を見せていた。  傘を開いた彼が、座ったままの私に手を差し出した。おそるおそるその手を取って立ち上がる。  同じ傘の中、彼は言った。 「じゃあうち来る?」  なにがじゃあなのかわからないけれど頷いて、その日私たちは恋人になった。  だから、私たちが友達だったことなんてほんの一瞬しかない。
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