運命は夜に散る

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 夏の夜はほんのり明るい。待ち合わせに向かう途中の大学構内には、昼間の暑さをさらっていくような心地のいい風が吹き抜けていく。  張り詰めた気持ちを風に溶かすように、私は歩きながら細く息を吐いた。  裏門を出ると、すでに暁斗が待っていた。  夏によく羽織っていたリネンのシャツも、細身のパンツも、涼しい顔も、たったひと月なのにあまりにも懐かしくて、胸がいっぱいになる。  私を見つけるとほんのちょっとだけ微笑む、暁斗のその顔が大好きだった。 「行こうか」  言いながら暁斗が私のほうに少し手を伸ばした。  その手は途中で止まって、暁斗はばつが悪そうな顔をした。 「ごめん、行こう」  持て余した手でこめかみを掻いた暁斗が、くるりと丘のほうを向く。  その手を追いかけて、触れたい。  付き合いたてのころは、私が手を繋ぎたいって言わないと繋いでくれなかった。それから徐々に、繋ぐのが自然になっていって、暁斗のほうから繋いでくれるようになったんだった。  そんなことが一気に思い出される。  今日でもう会わない。そう決めてきたのに、惹かれる気持ちを掻き消すことができそうにない。  ゆっくりと歩く暁斗の斜め後ろから付いていく。  口を開くと泣き声が出そうで、話せない。暁斗はいつも通りほとんど話さない。  私が話さないと、二人に会話はない。  
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