犯人は私

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犯人は私

 夏向が転校していった後、学校ではイジメの実態調査ということで、ウチのクラスは一人ずつ面談を受けることになった。夏向の今回のイジメのきっかけになったのは、当たり前だけど、私だという結論になりそうだ。途中からやり過ぎたな、マズいなと思ったけど、その時にはもう私一人の力では止められなかったのだ。歩積との約束もあったから、私は私なりに必死になって止めようとしたんだよ。 「夏向ちゃんは私の友達になってくれるの?」 「美月ちゃん、私たち、もう友達じゃん?」  そう言ってくれたあなたの言葉が帰国して間もなかった小学生の時の私にとって、どれだけ心強かったか。  それを忘れてしまっていたのは私。  ゴメンね、夏向。私はあなたを傷つけてしまった。昔みたいにとは望まない。だけど、今より少しだけでいいから、前みたいに一緒に話したりすることはできますか?  そして歩積兄さん、あの時の私はあなたに振り向いてほしかっただけなの。ううん、違う、独占したかったのかもしれない。だから夏向を排除したかった。夏向ではなくて、私だけを見て欲しかった。だって、あなたは夏向のことを好きだったでしょう?  私は自分のわがままで大事な人を二人も失ってしまった。正確には二人だけじゃない。歩積兄さんが実父のところに行ってしまってからの義母は全く私に関心を示さなくなってしまった。掃除の行き届いていた家の中も、いろいろ考えてくれていたんだろう料理も、多分どうでもよくなってしまったみたいで。家族皆が気持ちよく過ごせるように心を砕いていた義母はもういない。私の夏向へのイジメ問題では、義母は一緒に面談を受けることも普通に拒否したし。理由はシンプルに実の娘ではないからと面と向かって言われたし。忙しい父は勿論、面接になんて付き合ってもくれない。父は父で、私と夏向の関係がこじれたせいで、自分の姉、つまりは夏向の母と断絶状態になってしまっているらしいのだ。私は、父と伯母の姉弟の関係も壊してしまった。いつも両家そろって、お正月は祖母の家に集まって楽しく過ごしていたけど、多分これからは難しいだろうと言っていた。  自分で蒔いた種とはいえ、そんなこんなで、家に帰るのも嫌になった私は夜の街をさまようことも多くなっていった。そして、ある夜、警察に補導されてしまったのだ。警察からの連絡に義母は私を迎えに来ることを拒否した。『私の娘ではないので、父親に迎えにいかせます』と答えたという。丁度、出張中だった父は、それをどうにか切り上げて、明け方近くに迎えに来てくれたけど。満足にグレきることも出来ない自分がイヤになった。  学校では仲が良かったはずのクラスメイトが私を遠巻きにするようになった。学校側の方針として、夏向と同じクラスだった生徒は全員、大学の推薦枠を与えないという方針が決まったからかもしれないけど。私と一緒にいると損をするからと面と向かって言われたこともあるぐらいだ。ウチの学校では高校2年あたりからは受験がちらつき始めるから、一人、図書室で勉強するようになっても、それをイジメとはとらえられなかっただろう。  こんな私でも、昔みたいに、いつかそばにいさせてもらえる時がきたら。そんな風に思う私は、やっぱりわがままですか?
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