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祖母の家からの帰り道、ランドセル姿の子供と行きかった。
そしてまた思い出してしまったのだ。
私は7年ぶりの帰国で日本の小学校に通学することになった。不安が多い中、小学校に編入したところで友達はなかなか出来ないでいた。私の日本語がたどたどしくて、周囲からからかわれ、喋れなくなってしまったのが原因だったと思う。見かねたらしい長谷の美登里伯母さんが夏向の通うピアノ教室に誘ってくれた。丁度、ピアノ教室では発表会に向けて猛練習が行われていたタイミングだった。発表会の出演メンバーは決まっていたのだけど、伯母は先生と交渉し、夏向との連弾にしてもらって、一緒に発表会に出ましょうという段取りにしてくれた。伯母は長いこと仕事を続けていたせいか、なにかとタフ・ネゴシエーターな部分を垣間見せてくれる。
夏向は、お世辞にも愛想がある方ではなかったけど、ピアノ教室に私と一緒に行くために、わざわざ遠回りして迎えに来てくれる優しさはある子だった。義母が夏向を家に招待して、何度か夕飯を食べるようになると、ぎこちなかった私たちの仲も少しずつ良くなっていったと思う。日本に帰ってきて、初めて出来た友達は間違いなく夏向。夏向の家はお母さんがフルタイムで働いている人だったから、ウチで夕飯を食べて行くのは長谷の家にとっても都合がよかったらしい。飾り気のない夏向に私は学校で友達が出来ない悩みなどを相談するようになった。
「同じ学校だったら、よかったのにね」
そう言ってくれた夏向の言葉が嬉しくて。彼女が小学校から通っているという一貫教育の学校に空きが出たと聞くや、編入試験を受けて早速転校を決めてしまった私達はとても仲が良かったはずだ。
ついでに4つ上の義兄の歩積まで同じ学校に転校してくることになったのは想定外だったけど。
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