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「歩積と二人で出かけたの?」
「この前の追試クリアのご褒美でパフェ奢ってもらっただけだよ」
なんとなく美月の様子がいつもと違うから、言葉に気を付けながら答えてみたけど。
「なんで、私も呼んでくれなかったの?」
「えっと、私が頑張ったご褒美だったから?」
「今後は二人だけで出かけて欲しくないんだけど」
「うん、ゴメン、気を付けるよ」
従姉で、ホズミンの義妹の美月は学校でも評判になるくらいの可愛さだ。色白で、華奢で常に男子人気度上位ランキングの常連。そのキレイさを鼻にかけるわけではなく、人あたりもいい。そんな彼女を従姉にもてて、私は自慢でもあるくらい。でもホズミンに関しては、要注意だったことをうっかり忘れていた。まだ美月一家が帰国して間もないころ、ホズミンと仲良くしていた私に「歩積は私のお兄ちゃんなのに」と泣かれたことがあったから。
「夏休み、家庭教師の時間増やすの?」
「うん、私、数学マジ、ヤバいし。中学の単元を総復習したほうがいいって言われてて。内部進学とはいえ、校内入試は一応受験するからね。ほら、私、美月と違って成績が芳しくないというか。母親がかなり心配してて」
「そうなの。それだったら、私も一緒に勉強しようかな」
「それは無理だと思う」
「なんで?」
「美月とはレベルが違い過ぎる、私はかなり底辺にいるので」
そこまで言えば、美月は私に呆れたのか、引き下がってくれたけど。別に美月のホズミンを取ったりしないから、大丈夫なのに。私なんか相手にされてないから、安心しなよ、美月。
「確かに、夏向の数学はヤバいよね」
「おっしゃる通り」
「このままだと仮入学って言われたんでしょ?」
「ですです」
「せっかく同じ学校になれたんだから、本気で頑張ってよ」
「善処します」
いつも通りの美月に戻ったみたいだったから、私はちょっと安心していた。ホズミン案件は取り扱い注意。それを再確認させられた出来事だった。
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