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「だいぶ頑張ったね」
夏休みは週3ペースでホズミンに見てもらったおかげか、数学に対するアレルギーがだいぶなくなってきていた。
「この調子だと、2学期以降の予習もしておけそうだし、英語にも時間を回せそうだ」
「ホント、ホズミンには感謝しかないです。期末もだいぶ、平均点に近い点数を取れるようになってきたし」
「教え甲斐のある生徒だ」
「そんなに褒められますと照れますなぁ」
「手を抜きすぎだったんだよ、まったく。部活の掛け持ちもいいけど、ナツは時間の使い方がよくなかったんだろうね」
「勉強してなかったからなぁ。それに部活は一応、引退したし」
「バスケ部にバレー部にって、どれだけボール追いかければ気が済むの?」
「声かけられると断れなかったんだよね」
「ナツは背も高いし、運動神経もいいから、どっちの部活からも欲しい選手なんだろうけどね」
「それほどでもぉ」
そうなのだ、私は女子にしては168㎝と背が高い。
「高校でも頑張るの?」
「まだ決めてない」
「そっか。夏休みも終わるけど、ご褒美にどっか連れて行こうか?」
「えっ、ほんと?今年、お母さん、夏休みとれなくて、どこにも行けてなかったから」
「遊園地でも行く?」
「えっ、いいの?」
「来週の水曜あたりにでも行く?」
「あっ、でも」
「都合が悪い?」
「美月も誘わなきゃだから、都合聞いてみないと」
「なんで美月?」
「えっと、ホズミンは美月のお兄ちゃんだから?」
「・・・それって、美月からなんか言われたの?」
「えっと別に何も言われてないし」
「ナツは絶望的に嘘が下手だね。美月には黙ってればいいんじゃない?美月とは家族だし、いくらでも行く機会あるしね」
「いいのかな?」
「ナツは自分がどこかに出かけたりするのに、いちいち美月の許可をもらうの?」
「そうじゃないけど」
「じゃあ決まり。たまには秘密のひとつくらいあってもいいもんだよ」
そう言いながらホズミンがウィンクしてくるから、それもそうかなって。
でも、これって、お母さんにも内緒ってこと?お母さんはその日、飲み会とか言ってたし、そんなに遅くなるわけじゃないからいいか。お母さんに言ったら、絶対、美月の耳にも入って、面倒なことになりそうだし。あの時の私は、そのぐらいにしか考えていなかった。
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