3人が本棚に入れています
本棚に追加
「だって、ユウ君忙しくて、あんまり会えないし。それにさぁ、好き同士で、一緒にいたいって思ったら、離れて暮らしてんのおかしいし、ずっと一緒にいるんだったら、結婚して家庭持つのが良くない?」
「う~む……理解が追い付かん……。てかさ、そのユウ君は、結婚肯定してんの? 全部、明日香の妄想じゃなくて?」
眉間に皺を寄せまくる私に、明日香はからっと明るく笑って言う。
「大丈夫だよ~。ユウ君も結婚いいねって、しようって言ってるし!」
「全面肯定っていうのも、それはそれで心配になるなぁ……」
私はまだユウ君に会ったことはないけど、ろくでもない男感が拭えない。
当事者である明日香は、特にそうは思っていないようで平然としている。
ああ、ラブ・イズ・ブラインド。
「莉子さぁ、そんなに深刻に考えてたら、いつまで経っても結婚できなくない? いざとなったら、離婚だってできるんだから」
「一理あるかもしれないけど、婚約中にそれを言うかね」
「ふふっ。ほーんと、莉子は心配性だねぇ」
呑気に笑う明日香。何を言っても、本気の恋に落ちた女には通用しない。
「はーい、スイマセンでしたー」
お手上げ、というように両手を広げてみせてから、私はラグの上に寝転がった。
だってさ。
一年半、密かに片思いしていた相手がさ。
私がオススメしたカフェバーに一人で行って、そこでカウンターの席が隣り合った男と運命の出会いを果たすだなんて、しかも、たった三ヶ月の付き合いで結婚を決めるだなんて、誰が想像できたっていうの?
今でも思うよ。
もし、私があの店を勧めなかったら、このルームシェアは永遠に続いていたのかなって。
最初のコメントを投稿しよう!