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嘘つきな舌は苦く苦しい
ジューンブライドなんて海外の習慣だよね、日本は梅雨だし、なんてバカにし合っていた明日香が、来年の六月に結婚式を挙げることになった。
しかも、今月二十二日の「いい夫婦の日」に入籍するんだって。アホか。
私は缶ビールのプルタブを引くと、高々と掲げて言った。
「えー、では、明日香さんのご結婚と幸せな未来を祝しまして、」
すかさず明日香が片手を振って、それを制する。
「莉子、普通でいいから。あと、今の、すっごい棒読みだった!」
苦笑する彼女に向かって、私は無言で缶を差し出す。すかさず明日香が自分の缶チューハイをぶつけて、取りあえずの「結婚祝い宅飲み」が始まった。
明日香は私のルームメイトだ。お互い二十二歳のフリーターで、元々は同じシェアハウスで暮らしていた。
陽気なイメージを持たれることが多いシェアハウスだけど、意外と暗黙の了解というか、細かいルールが多い。年長者は偉そうだし。嫌気が差した明日香が、仲の良かった私を誘って二人暮らしを始めたというわけだ。
「自由と節約」が主な目的だったものの、この二年間のルームシェア生活は意外と快適だった。洗面所に髪の毛を落としたままにしない、とか、お菓子とお酒は各自で買う、とか、やっぱりルールはできるけど、相手が明日香だからかな、そこまで苦じゃない。
そんな楽しい生活に、突如終止符が打たれた。明日香が、付き合って三ヶ月の男(二十七歳・大手メーカー勤務)と結婚すると言い出したのだ。
いやいや、ちょっと待ってよ。三ヶ月ってさ、あまりにも電撃結婚過ぎない?
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