6・想い想われ

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 千隼さんはニヤッとすると、背後からわたしの肩に手をおき、首筋に噛みつく真似をする。 「ち、ちょっと……」  もう、千隼さん。悪ノリがすぎますって。 「ああ、もう、ヤバすぎて鼻血出そう。残念。スマホ持ってくれば良かった」 「冗談やめてよ。写真はNG」 「なんだ、久保、いつもとあんま変わんねーな」  都築だった。 「女装させられんのかと思ってたけど」 「女装って何よ。あんたこそ、普段着じゃん。それ」  都築はパイレーツ・オブ・カリビアンのジャック・スパロウ。  ハマりすぎで、逆にコメントしづらい。  いつもの調子でやり合っていると、ふと視線を感じた。  千隼さんがいつもより少し険しい目つきでこっちを見ていた。  すぐにいつもの穏やかな表情に戻ったけど。 「あー、もーこの会社、役者が揃いすぎてて、ほんとにツライっす」 「そういう君もなかなかイケてるけど」 「きゃー、都築さんにそんなこと言われたら、もう、今、命が尽きても本望」とジタバタしている。    でも、麻央がいてくれて良かった。  わたしは誰にも気づかれないように、ふっとため息をついた。  
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