7・決心

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 覚えているも何も、鮮明すぎる記憶に、今まさに悩まされている最中だったけれど。 「めちゃくちゃ飲んで、ふたりで忍び込んだんだよな。コンペの日の夜中にさ」  胸がドキンと高鳴ったが、とっさによくわかっていないフリをした。 「そう……だったね、確か……」  その返事を聞いて、都築はわたしの顔を眺めた。 「お前、あの日、相当飲んでたからなあ。もしかして覚えてないとか?」  それには答えず、わたしは反対に聞きかえした。 「都築のほうこそ覚えてないんじゃない?」 「いや」  即座に否定すると、都築は確信に満ちた声で答えた。 「覚えてるよ。ちゃんと」  ちゃんと、って?  つまり……  ちゃんと覚えているってこと?  キスしようとしたことを。    でも今さら、なんで、そんなこと言い出すんだろう。  わたしはようやく熱を持ちはじめたカイロを、思わず握りしめていた。 「寒かったな、あの日。凍え死ぬかと思った」  でも、ふたりで分け合ったショールのなかは天国みたいに温かかった。  都築との距離が近づいた。  わたしはそう思った。
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