7・決心

10/16
541人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
「まあ、喜ばしい話じゃないからな。お前だけじゃなくて、友達には誰にも言ってないよ」  都築は話を続けた。 「あいつ、俺の気持ちが自分から離れてることにうすうす気づいてたから、子供がだめになって捨てられると思ったんだろうな。精神的に参っちまってさ。だから……封印したんだ。お前への気持ちは。あのとき、キスも拒まれたからさ。俺の一人相撲だと思ってたし」 「そうだったんだ……」 「今はもう落ち着いているけど、一時は入院したり、いろいろあった。だからさ。俺はユキと別れられないっていうか、別れる気はないんだよ。今はもう落ち着いてきてはいるけど、また壊れていく姿を見たくない」  そう言うと、都築は前かがみになって下を向き、組んだ手の上に自分の額を預けた。 「だけど、お前もずっと好きでいてくれたんだよな、俺のこと」  うめくような声で都築が訊いた。  もう心を偽ることなく、わたしも素直に答えた。 「うん。ずっと好きだった」  下を向いたまま、都築は言った。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!