7・決心

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 地下鉄の昇降口があるオフィスビルの前まで、何も話さず、黙々と並んで歩いた。  お互いの本心を知った今、ふたりの間の空気は、やっぱり変わってしまったように思えた。  寂しいけれど、それは仕方ないことなんだろう。 「じゃ、俺、JRで帰るから」 「うん。じゃあまた月曜日に」  わたしが階段を降りようとしたとき、都築が声を掛けてきた。 「久保」  わたしは振り返った。 「なあ、ひとつだけ訊いていい? なんで、あのとき、俺を拒んだんだ?」 「今さら聞く? そんなこと」 「うん、教えてよ。俺、結構、後まで引きずったんだぜ。女に拒まれたのは初めてだったし」  ったく。  どこまで自信過剰なんだか。 「ただ酔った勢いでするのが嫌だっただけ。だって、あれ、ファースト・キスだよ。女の子にとって、一番大切なキスなのに」  わたしが真面目な顔でそう言うと、都築は吹き出した。 「女の子にとってか。ずいぶん純情なこと言うな。柄じゃねーけど」 「そう言うと思ってたよ」  目を合わせ、笑いあった。  ああ、これがいつものわたしたちだ。  よかった。都築は都築だ。変わらない。
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