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扉が開くとすぐ、操作パネルの角に押し込まれる。
わたしの手を取ったまま、都築は閉ボタンを押す。
「どうしたの……」
顔を上げると、都築の唇が降りてきた。
そして都築の唇を感じた瞬間、7年の歳月はあっというまに無に返った。
これは7年越しの……
紛れもないわたしのファースト・キスだ。
熱情を注ぎ込むような口づけを一度解き、都築はさらに強くわたしを抱きすくめた。
そして、再び、三たび唇を重ねてくる。
身体の芯から喜びが湧き上がり、焦ったい気持ちに襲われる。
7年の歳月を一気に埋めようかとするような、息をつけないほどの激しい口づけに翻弄され、思わず伸ばした手がボタンに触れた。
ガクンとエレベーターが動き出す。
都築は名残惜しげに唇を離し、掠れた声で囁いた。
「一緒になるか。裏切者に」
わたしも同じ気持ちだった。
できることなら、ふたりでこのままどこかに行きたい。
誰にも邪魔されることのない、ふたりきりになれる場所に。
でも、わたしはそっと都築の胸を手で押した。
「そんなの無理だよ」
抱えているものが多すぎる。
都築もわたしも。
それに、激情に流されて、愛に身を投じる年じゃない。
そのぐらいの分別は持ち合わせていた。
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