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株式会社『FREE TALK』では、何でも屋として日々様々な依頼をこなしている。都心から離れた山の上にあるこの会社は、主に近所の一人暮らしをしている高齢者の生活のサポートと会社の代表である佐倉浩介の古巣である劇団の大道具や公演の運営をしている。夏になるとイベントのお手伝いなんかもやっている会社だ。
浩介の高校の同級生である私、原田愛那は、社屋兼社員同士でシェアハウスをしているここ茶座荘でカレーを作り続けている。これは浩介の思いつきから始まったものだった。
***
「愛那、このカレーここで売ってみない?」
そう浩介が言ったのは、劇団の公演終わりで茶座荘に戻ってきて、リビングでケータリングとして劇団員に振舞ったカレーの残りを食べているときだった。
少し前にカレーイベントのお手伝いをしたとき、とあるスパイスカレー店の店長から作り方の基礎を教えてもらってからというもの、趣味程度に家で作ってみたら思った以上に好評だったので、最近は大量のお弁当が必要なときにカレーを振る舞うことが増えた。
カレーはどこに行っても割と喜ばれるし、弁当代も安く済ませられる。何より、スパイスの配合を考えながらルーを作る時間は集中力が高まっていいストレス解消になる。だけど、売るとなると話は違う。この家で売るの?
戸惑う私に浩介は1枚の写真を見せてくれた。この家の昔の写真らしく、高齢の女性がここのリビングでケーキとお茶を運んでいる姿が映されている。
「昔ここで簡単な喫茶室をやってたんだ。俺のばあちゃんが1人でやってたんだけど、お茶と軽食を出してた。お客さんも近所の友達とかがほとんどだったんだけど、楽しそうだったんだよね。
近所でサポートしに行っているおばあちゃん、中川さんも言ってた。昔ここでのんびりお茶をするのが楽しかったって。まあ、その時は単なる昔話だと思ってたんだけど、このカレーを沢山の人に振る舞えないかなって思ったとき、これを思い出したんだ。大掛かりじゃなくていいから、ここを喫茶室にしてみない?」
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