恋愛小説嫌いの僕に恋愛小説家の君が教えてくれたこと

１．プロローグ

　人生を変える出会いという言葉がある。小説や映画でよく聞く言葉だけれど正直そんなものかけらも信じていなかった。
　三月の初旬、空気はまだ冷たくて冬の名残が残っていたけれど、太陽の光には春の色がはっきりと見えたあのころ、啓(ひろむ)は恋を失い、その失意のどん底で彼と出会った。
　澤木　椋(さわき　りょう)。彼と出会って、人生を変える出会いがあることを初めて知ったのだ。