第1話

1/4
1961人が本棚に入れています
本棚に追加
/370ページ

第1話

 茅ケ崎駅の改札を出ると、女性はメモに書いてある住所へと向かった。 手元の携帯の地図を頼りに、入り組んだ住宅街を進んで行く。 目的の家はもうすぐのはずだ。 女性は一軒一軒の家を確認しながら、慎重に歩いて行った。すると交差点に差し掛かった角に、探していた家はあった。 オレンジ色の漆喰壁が特徴のその家は、白い窓に白い扉、庭には秋咲きのバラが咲き誇り、まるでおとぎの国に出て来るような可愛らしい佇まいだった。 よく吟味して選んだと思われる新しい表札には、予想通りの名字がしっかりと刻まれていた。 そしてガレージには、見覚えのある車が停まっていた。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!