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『僕の小説が書籍化した』
追い求め続けた夢の一つが叶った瞬間だった。
鳴り響く乾杯の音と、祝福の声、飛び交う言葉。
何年も正解のわからない世界で書き続けた物語に、報いが訪れた。
全てが美談になるわけではないけれど、形になったことで洗い流せる苦悩もある。
創作中に浴びた厳しい言葉も、揉まれた画面越しの対人関係も、一つの夢という大きな達成を前にどこか許せる僕がいた。
『作家としても、人間としても成長した』そう思いたい。
辿々しく何かを伝えることが精一杯だった僕は、流暢に言葉を発し。
甘い何かが好きだった僕は、アルコールを片手に誰かと笑い合うようになった。以前より現実主義者になり、面倒臭い手続きも、自炊も、世で言う『大人らしい』ことを当たり前にするようになった。
夢を追い続けていた幼いままの僕とは、どこか違う気がする。
ここに集まった人は皆、僕が『創作者』として出逢った人で、縁の繋がった人。
人の夢を暖かい祝福で包んでくれる優しさを持った人。
「結稀」
「ん?」
「書籍化、本当におめでとう」
「ありがとう、ずっと一緒に夢を追い続けてくれて本当にありがとう」
「こちらこそだよ、最後にこんな喜劇をみられるなんて」
「……僕もまだ信じられないよ」
「一つ夢を叶えたんだ、結稀も今夜はいい夢がみられそうだね」
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