カーテンは空の色

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 付き合ってから五年後に結婚した。その二年後。 行ってらっしゃいとおかえりのキスとハグ。おはようとおやすみの挨拶。いただきますとごちそうさまの感謝。日常生活に不満はない。毎日が幸せで、家族として大切にされていることは感じていた。それでも、ぽっかりと空いた大きな穴がずっと塞がらないでいる。  明日が休日であるたびに期待を抱く。 「ねぇ」 「どうした」  呼びかけても、背中を向けたままでこちらを見てくれない。これだけで察してしまう。 「しない?」 「ごめん、疲れてるから」  わかっていても、毎度傷つく。この痛みに慣れない。そっかとだけ返事をして、背中を向けた。もう何年触れられてないのだろう。元々結婚する前からレスだった。それでも好きだったから、結婚すればきっと何かが変わると信じて結婚した。それでもなにも変わらなかった。女としての自信が削られていく。  それでも、朝になれば夜のことなんてなにもなかったかのように起きてくる。用意したお弁当を渡して、仕事に送り出す。 「遥人、行ってらっしゃい。頑張ってね」 「都子も締切近いんだろ、無理しないようにな。行ってきます」  ハグをしてキスをしてからドアを閉める。ガチャンと鍵を掛けると、私の仕事が始まる。イラストレーターとして仕事をしている私は午前中に家事を終わらせて、午後から仕事に取り掛かる。今日は同じ仕事をしている友人と通話しながら、仕事をする予定となっていた。  約束していた時間ちょうどに友人の華恋から着信が鳴った。 「お疲れさま! 作業捗ってる?」 「今から作業始めるところよ。それより昨日も断られた」 「まだ諦めてなかったの? これ何年続いてるのよ」  華恋にそう聞かれて指折り数えてみる。 「四年超えたね」 「執着えぐい」  華恋からの何気ない一言に筆が止まってしまった。これは執着なのだろうか。私はただ、愛する人と抱き合いたいだけなのに。
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