カーテンは空の色

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大人になってから実はそういう関係の友達がいることは珍しいのだと知った。 「ねぇ、華恋はいつから私のことが好きだったの」  少し驚いた目をして華恋は笑った。 「そんなの知らなくていいよ。どうしても知りたかったら、都子も私と不倫して」  いつもの無邪気で優しい目はどこにもなくて、上目遣いするその表情からは官能的な何かを感じることができた。思わず、女の私でもドキッとしてしまうような、そんな表情。 「私まで不倫したら、旦那と同じになっちゃうよ。冗談でもその顔はずるいよ」  笑って誤魔化したつもりだったが、きっとぎこちなかったに違いない。華恋はこれで男を落としてきたのになーと身体を伸ばしながら笑っていた。本気で誘われていたのだろうか。 「ねぇ、旦那が帰ってくる前に私も帰った方がいい?」  華恋にそう問われて悩んでしまった。一人で冷静に話し合いができる自信はなかった。もし、話し合いがうまくいかなかった時のために縋りつける誰かを近くに置いておきたい気持ちもある。答えが出せないでいると華恋が一つ提案をしてくれた。 「不安ならさ、私この近くのコインパーキングに車停めてきてここに戻ってくる。都子が普段使っている作業部屋で待機しているからなにかあったら呼ぶというのはどう?」 「けど、実は家の中で華恋が話を聞いていましたって旦那が知ったら怒らないかな……」 「怒ったなら怒ったでその程度の人間だったって思えばいいよ。とりあえず、もう夕方だし車の移動だけしようか」  空になったクッキー缶を捨てるのはなんだかもったいなくて、中を綺麗にして残すことにした。二人で外に出て、再び車に乗る。コインパーキングまでの短い距離だったが、家から離れるだけで安心している自分がいた。車を停めた後は、もちろん徒歩で家に帰った。  だが、その道中というよりも向こう側から歩いてくる女性の服装にすごく見覚えがあった。相手はこちらに気づいていなかったようでそのままとある家の前で立ち止まった。 「都子、あの人ってもしかして……」  華恋も想像した通り、昨日家の中にいた不倫相手だった。彼女はインターホンを押して誰かが出てくるのを待っている。昨日の生々しい喘ぎ声が蘇ってきて、息が苦しくなる。胸が苦しくなって呼吸の間隔が短くなっていく。 「都子落ち着いて、大丈夫だよ。私もいる。一緒に行こう。無理なら私一人で行ってくるから」  そう言ってくれたが、華恋一人で向かわせると喧嘩になりかねない。震えを抑えながらなんとか深呼吸を繰り返した。もう大丈夫だと立ち直れたところで、華恋の腕を引きながらその女性に近づく。
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