カーテンは空の色

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 ここに来て初めて旦那は不倫相手に冷たい態度を取った。だが、今更そんなものを見せられたところで安心できるわけがない。信用できるわけがない。 「俺本当に都子のことが好きなんだよ。こんなことで離婚したくない」 「こんな……こと?」  私が裏切られたと感じた不貞行為はこんなことという軽い言葉で片付けられるような出来事だったのか? 私が傷ついて、泣いたこの痛みはそんなものなのか? 違うだろう。理解されなくても、これは私の痛みだ。わかったふりをされるのも、軽い言葉で終わらされるのも違う。 「ふざっけんなよお前! 都子はお前らがセックスしている生々しい声をここで聞いて耐えてたんだよ! 自分の愛する人がたった壁一枚越しで他の女抱いている事実が、こんなことで片付けられるわけねぇだろ!」  華恋が代弁してくれる。この中で私の痛みをわかってくれるのは彼女だけだ。心の中に決意が固まっていく。 「都子、こんなやつのために泣かなくていいよ」  いつの間に泣いていた私に華恋はティッシュを差し出してくれた。 「遥人、離婚しよっか」 「なんでそうなるんだよ! 俺都子のことこれからちゃんと大事にするから。二度と傷つけないから!」 「遥人くんなんでこんな人にこだわるの? 離婚して私と結婚しようよ。そのほうが幸せになれるって」 「お前は黙っとけよ!」  感情任せに叫んでいる旦那を見て気持ちがどんどん冷めていく。どうでもいい。心底、どうでもいい。あれだけ傷ついて泣いていた自分がバカらしく思えてくると、笑いが込み上げてきた。ハハっと乾いた笑いが響く。 「安心してよ。慰謝料も取らないから。すぐに出ていくから、その女と再婚して今度こそ幸せになれば」 「都子ダメだよ、ちゃんと慰謝料は取っておかないと。これからの生活のこともあるし、少しくらい痛い思いをしないと……」  華恋が私の背中を撫でて、優しく手を握ってくれている。大抵の人ならそうするというのはわかる。でも、私にはそこまで戦う気力はなかった。話し合いで全てが終わるのなら、もうそれで良かったのだ。 「いらない。これで終わるのが一番楽だから。もういいの」 「俺は絶対、離婚届にサインなんてしないからな」 「お前は黙ってサインしろよ。都子は私がもらうから。お前みたいなクズとの結婚を祝うんじゃなかったよ」  今日はもう私の家に帰ろうと言って、華恋は私を立たせてくれた。 「はっ、レズかよ。気持ち悪い」  思わず、私は気持ち悪いと放った不倫相手の顔を叩いた。 「なにすんだよクソババァ!」 「あんたたちみたいに背徳感を餌にセックスしないといられないような関係より、私たちの方がよっぽど健全だと思うけどね」
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