カーテンは空の色

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思わずため息が溢れる。原因がわからないままレスになって、私の方からもできる努力はしてきたはずだ。それでも効果はなかった。 「今度さ、個展があるんだけどパンフレット作るために数枚撮影したいって言われたけどヤバいよ」  そういえば、華恋は個展を控えているのだった。撮影のなにが問題あるのだろうか。訊いてみると、彼女は嘆くように言った。 「作品とか、展示風景じゃなくて私単体での写真が欲しいって言われたの。来月撮影することになったんだけど、痩せなきゃまずいよね」  なるほどと納得してしまった。私も華恋も、学生時代と比べて十五キロほど太ってしまった。ハードな学生生活を送っていた反面、卒業した途端、外出することも減り、元々運動する習慣のなかった私たちはそのままブクブクと太ってしまった。二人で痩せたいねと言い合うのが口癖みたいになっている。 「残り一ヶ月でしょ。頑張っても五キロが限界じゃない?」 「今無理矢理五キロ落としてもすぐリバウンドするのが目に見えてるよ……」 「私たちもう三十手前だよ? そう簡単に痩せれないって」  電話の向こうから呻き声のような叫び声が響いた。どう頑張ったって十代の頃とは代謝が違いすぎる。若い頃から健康的な体型をキープしなければならないとはよく言ったものだ。  それから私たちは最近観ているアニメの話や、仕事の話をしてあっという間に五時間が過ぎた。一人だとついつい休憩を挟みながらしてしまう長時間の作業も、電話していると休むことを忘れてしまう。時々、作業の手は止まってしまうがそれでも捗ることに間違いはなかった。 「じゃあ、そろそろ今日の作業は終わりにしようかな」 「おっけー。また近いうち連絡するよ。あんたは旦那の手料理でも食べてきな」 「今日は私が作る日なんだなー。また今度ね」  軽口を受け流しながら電話を切った。もう少し、もう少し、キリのいいところまで作業をしようと続けていると、部屋のドアをノックされた。 「ただいま。まだ作業続ける?」  遥人が帰ってきていた。時計を見ると二十時を回っていた。 「ごめん! すぐご飯用意するから」  パレットと筆をテーブルに置いて立ち上がった。エプロンも外そうとしたところで、遥人が大丈夫だよと言って制止してきた。 「今日は俺が作るよ。キリ悪いんでしょ。仕事続けても大丈夫だよ」  遥人も疲れているだろうにこうやって気を遣ってくれるのはありがたい。言葉に甘えて、私はもう少しだけ作業を続けることにした。
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