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華恋が鼻で笑いながら、私の肩を抱いて玄関へ向かっていく。後ろから旦那が私の名前を呼ぶ声がしたが、無視した。家を出て、夜の住宅街を走った。ずっと、ずっと走っていられそうな。そんな爽快感が全身を伝う。
だが、普段家の中でしか仕事をせず外に出ない私たちはすぐに息が切れて立ち止まった。ゆっくりと歩き出す。
「アハハハッハハッハッ……。あぁ、終わったんだね」
「終わってないよ。これからだって。私がこれから都子を幸せにする。裏切ったら刺していいから」
華恋の重すぎる愛にまた笑いが溢れた。でも今はその重々しさがちょうどいい。
「さすがに刺せないから、軽く首くらいは絞めちゃうかも」
「安心してよ。都子を殺人犯にしたりなんかしないから」
いつの間にか華恋の家に着いていた。華恋は楽しそうに家の中に入っていく。あとを追っていくと、華恋がなにも置かれていない一つの部屋に案内された。
「今日からここが都子の作業部屋。部屋が足りないから、寝室は一緒なんだけどそれでもいい?」
こくりと頷く。この日は他にはなにもせず、すぐに二人で一緒に寝た。朝起きたとき、隣で華恋が幸せそうに寝ている顔を見ると安心した。こんな感情はいつぶりだろうか。再び目を閉じると、悩みのない日常の幸せを思い出した。
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