カーテンは空の色

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 結局寝不足のまま、会議に挑むこととなった。行きの車では妹に運転してもらって、睡眠をとっていた。だが、会議中にあくびが出るのは恥ずかしいのでコンビニ寄って眠気覚ましにコーヒーを飲んだ。よし、と気合を入れて依頼を受けたゲーム会社の中に入った。受付を済ませるとすぐに会議室まで案内された。 「絶対に妥協しちゃダメだよ。都子のこだわり忘れないで」 「うん。わかってる」  私が自分のことを理解している以上に妹、瞳は私のことをわかっていた。完璧を目指してしまうこと。人からアドバイスをもらうと自信をなくすこと。一番のこだわりを自信もって主張できないこと。  どれもイラストレーターとしては致命的な短所だ。だが、毎度それを補うかのように瞳が手助けしてくれる。そして、始まった会議では、相手が慣れているおかげか、スムーズに話が進んだ。こちらが提案したラフ案も受け入れてもらえて安心した状態で終えることができた。最終的には候補として出したラフ案の一つを完成させることになった。あとは進化させた後の別の案が欲しいということになった。 「良かったね、上手くいって」  瞳に褒められて照れくさくなる。お昼ご飯を食べてなかった私たちはカフェに入った。ランチセットを注文してお冷で身体を冷やす。 「この間さ、女風行ってみたんだよね」 「女風って?」  聞き慣れない言葉が出てきて、そのまま聞き返してしまった。瞳はバカにするわけでもなく、当たり前のことかのようにさらりと正式名称を言った。 「女性用風俗のこと。この先、彼氏作ったり結婚したりするつもりはないけど、やっぱり性欲だけは余ってるからさ。試しに行ってみたの」  妹の口から性的な話が出るとは思わず、こちらがドキマギしてしまう。瞳は昔からなんでもあっけらかんとした様子で話をすることが多い。大事なこともしょうもないことも近いテンションで話すから、どこまで踏み込んでいい話題なのかわからなかった。料理が運ばれてくる前に聞かなきゃと思ってしまった。 「どう、だった……?」 「どうって、さすがプロだなって感じ。今までの元彼全員ド下手だったんだなって思うレベル。興味なるなら紹介しようか?」 「いや、私はいいよ。旦那もいるし、それにやっぱ好きな人が風俗行くなんて嫌でしょ」  お待たせしましたと料理が運ばれてきた。瞳と顔を合わせるのも気まずくて、誤魔化すようにフォークを手にとる。 「だったら、なんでレスになんてなるの」  身体が固まる。言い訳はいくらでも並べられるのに、いざとなると言葉が上手く出てこない。タイミングが悪かったふりをして、料理を口に運ぶ。咀嚼している間に言い訳を考えた。 「ほら、家族になると相手のこと異性として見れなくなるって言うじゃん。私たち付き合ってからの期間も長いし、こうなっても仕方ないんだよ」 「でも、都子は旦那さんのこと異性として見てるから期待するんでしょ。その言い訳はお互いが冷め切って男と女になれなくなった時に使う言葉だよ」  上手く、咀嚼できなくて飲み込んだものが喉に詰まった。咳をして、水を飲んでなんとか胃に流し込もうとする。焦りすぎだ。
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