春ー5 今は、二人の寝室。

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春ー5 今は、二人の寝室。

 ホーネージュに戻ってから、ジョンズワートの寝室は、カレンの寝室にもなった。  4年前、ジョンズワートを夜のことに誘ったカレンは、彼のベッドにも上げてもらえなかったが……。  今では、同じベッドで過ごすのも当然になっている。  ジョンズワートも、カレンを拒むどころか、「おいで」と言って、カレンを自分の足の間に座らせる。  今日も一緒にベッドに乗りあげ、カレンを後ろから抱き込んでご機嫌のジョンズワート。  もう夜だから、互いに寝衣である。  カレンからはまだ恥ずかしさが消えていないが、旦那様がにこにこだし、決して嫌ではなかったから、彼の好きにさせている。  時折、「あー癒される……」「疲れが飛ぶ……」なんていう言葉も聞こえてくる。   「あの頃、きみに触らなかった僕は本当にバカだ……」 「もうあんな避け方しない。離さない。この温もりなしで生きるのは厳しい……」  こんなことを言いながら、ぐりぐりとカレンの肩に頭をこすりつけてくるものだから。 「もう、大げさですよ。ワート様」  甘えん坊の大型犬みたいで、つい笑ってしまった。  そっと手を伸ばし、ジョンズワートの頭に触れる。  さらさらとした金のそれは、触り心地がよくて。なでなでなでなで、と夢中になってしまった。  ジョンズワートはといえば、ようやく取り戻した愛しい人に撫でられるこの時間を、じっくりと味わっている。  大人しく。とても嬉しそうに。黙って撫でられる姿は、本当に大型犬のそれで。  自分より年上の公爵様に対して、可愛い、と思ってしまった。  しかし、可愛いわんちゃんのように思えても、ジョンズワートは大人の男である。  どこでスイッチが入ったのかわからないが、カレンの頬を撫でながら、「カレン」と耳元で名前を呼んできた。  熱を孕んだ甘い声に、頭がくらくらする。   「ワート、さま……」  ああ、求められている。  彼の声から、動作から、それがわかった。  自分に触れる彼の手を、カレンは拒まなかった。   *** 「んん……」  ベッドに一人残されて、まどろむ。カレンの声は、少し掠れていた。  そこに、温かい飲み物を持ったジョンズワートが戻ってきた。 「はちみつ入りのホットミルクだよ」 「ありがとうございます、ワート様」  ぽやぽやとしながらも、ジョンズワートからカップを受け取る。  カレンの疲れや眠気を感じ取ったのか、カップを落とさないよう支えてくれた。 「おいしい……」  たっぷりとはちみつの入ったホットミルクが、カレンの心と身体を温める。  はちみつを入れてくれたのは、自分の喉を気遣ってのことなのではと気が付き、カレンは頬を染めた。  先ほどまでのことを思い出してしまい、さらに顔が赤くなる。  そんなカレンを、ジョンズワートは愛おしそうに見守っていた。  カレンの声を掠れさせた、喉に気を遣うべき原因を作ったこの男、それはそれは上機嫌で。  一旦カレンからカップを預かると、髪や頬にキスを落とし始める。  カレンは思う。  4年前の自分に、こんなにも愛される未来が待っていると、教えてやりたいぐらいだと。  吹っ切れた彼は、その想いを信じる以外にないほど、愛情表現をしてくると。  なでなで。すりすり。キスも何度も受けて、ひゃー、という気持ちになりながらも。  カレンは、旦那様の愛を受け止め続けた。
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