その悩みは……

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 ぼくは悩みがスッキリした時の高揚感で、軽いステップで洒落た店内に入ると、彼女は殊更に浮かない顔でパタパタとテーブル、厨房、テーブル、厨房、と行き来してしていた。  時折、溜息を吐いたので、もう見てられなかった。  あれ? どうしてなのだろう?  最初はただのナンパのつもりだったのに?  ぼくは中央のテーブルに着くと、彼女に注文をした。 「トマトジュースとナポリタン。後、スマイルを……ここはマックじゃないからダメかな?」  彼女はさすがにプッと吹き出して、注文を受けると奥へと行ってしまった。  ぼくは少しの笑顔だけでもいいんだ。  さて、彼女の将来か……。  しばらくすると、彼女が注文したトマトジュースとナポリタンをトレイに載せて来た。    ぼくのテーブルに並べていると、急に深い溜息を吐いた。 「ご注文は以上で、それと……少しの間だけど楽しかったわ。私……ここ辞めるの……もう就職活動しないといけない……」 「ふむふむ」  「でも、不景気で……」 「続けて……」 「もう田舎に戻るしか……楽しかったキャンパスも、楽しかったイベントも、あなたも楽しかった……あら? どうして私……?」  ぼくたちはお互いに笑い出した。  洒落た店内には珍しく客が疎らだった。  食器とナイフとフォーク、そして、スプーンの音以外は静かだ。 「少しはスッキリしたかい?」 「ええ……あなたって、不思議な人ね」 「へえ。そうかい? 自分では……普通だと思ってるよ」  彼女はまた笑った。
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