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「見ろよ懐斗、AIだ」
僕は新の言葉に、彼の指さす方を見た。
今日は休日、僕と新は食べ物フェスに来ていた。
半年に一度、全国から色んな美味しい食べ物を売っている店が集まってくる。
ある程度、色んな店を回ってから何を食べるか決めようかと思っていたとき、新が僕の服の袖を引っ張った。
新の指さす方向には、他の店とはあからさまに間隔を空けられた店があった。
その中から無機質に呼び込みをする声が聞こえてきた。
「こんにちはー。りんごはいかがですかー」
真ん丸の顔。銀色にコーティングされた体にピンクのエプロンを身につけてリンゴを売っている。周りは人間ばかりの店であるから、やたらと浮いて見える。
「あのタイプのAIってもう生産されなくなったよな」
「え、そうなの?」
僕の言葉に、新はジトリと僕を見る。目が、この時代遅れ、と言っているようだ。
「お前、ほんとそういうの疎いよな。今やあれは旧式の旧式だぜ?」
「へえー……。じゃ、ああいう子は珍しいんだ?」
「ああ。今でも使ってるのは金に余裕がないか、よっぽど古いもん好きかのどっちかだろ。そうでなきゃわざわざあんな性能の低い、いかにもロボットです、ってやつ買ったりしねえよ」
その言い方はあんまりじゃないか。少なくとも僕はロボットチックな見た目にはどこかひかれるものがある。
「何だよ、あの店行くのか?」
僕がその店に向かおうとすると、新に呼び止められる。
「うん、ちょっと気になるし。いいよね、僕おごるからさ」
「まあいいけどさ。お前も結構古いもん好きだよなあ」
それはこの際関係ないと思ったが、否定するのも面倒なので無視することにした。
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