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「おねえちゃん」を笑わせることはもう無理なんだと知ったあの日。正直僕は、よくわかっていなかった。ただ、機械は周りにたくさんあったから、「おねえちゃん」が何を言おうとしているのかは、子供ながらに理解できた。
僕はそれ以来「おねえちゃん」に会いにいくことはなくなった。記憶の中に封じ込めて、何事もなかったかのように装っていた。
でも、やっぱり心の奥では「おねえちゃん」を求めていた。ロボットにひかれるのも、一人でいたこの人が気になったのも、どこかで覚えていたからだ。
ごめんなさい、と言いつつ「おねえちゃん」は続ける。
「どうして、そんなに悲しい顔をするのですか?」
「……『おねえちゃん』こそ、どうしてそんなに気にするの?」
感情なんてないはずなのに。機械なのに。僕と話しても笑うことができないと言っていたのに。楽しいと思うことができないと言っていたのに。
「あなたが悲しい顔をするからです」
「……僕が悲しい顔をすると、気になるの?」
「はい」
嬉しいって気持ちと戸惑う気持ちと、ちょっと、切ないって気持ちが混ざり合う。
「何で気になるの……?」
「……わかりません。ただ……」
「ただ?」
「おねえちゃん」は言葉を探してるみたいに見えた。
「あなたを知りたいんです」
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