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知りたいっていうのは相手に興味や関心を抱いている証。どこかでそんなことを聞いた。
「僕のこと、知りたいの?」
「はい」
「おねえちゃん」が頷く。それはもうしっかりと。相変わらず表情はないけど。
もし「おねえちゃん」が人間だったら、僕はきっとものすごく舞い上がっていたに違いない。
でも、「おねえちゃん」は機械だから。僕とは気持ちのベクトルが違うのだと思う。
それでも、やはり聞かずにはいられなかった。
「どうして僕のことを知りたいの?」
「どうしてでしょう。私は今、あなたのことをとても知りたいと思っています。そして、理解したいとも」
「理解?」
「おねえちゃん」は頷く。
「私はずっと人間を理解するよう努めてきました。それは、博士が私にその役目を与えたからです」
「よく、わからない」
「博士は私に役目を与えました。私は忠実に守ってきたつもりです。りんごを売ることと同じで、人間を理解することを私の役目だと認識していました」
だけど、そこに感情を伴うことはない。この人は確かにそう言った。
「……」
僕が黙っていたら、「おねえちゃん」が急に僕の左手を取った。
「え……」
握った僕の手を見つめながら「おねえちゃん」が呟く。
「何故でしょう。私は今、あなたをとても知りたい、理解したいと思います」
「それが、役目だから?」
「おねえちゃん」が顔を上げて僕の目を見つめる。その目を見ていると、吸い込まれそうになる。
しばらく二人で見つめ合っていると――こんな言い方をするとロマンチックに聞こえるかもしれないけれど――、「おねえちゃん」がゆっくりと首を横に振り、再び僕の目を見て言った。
「あなただから、です」
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